昨年までチームは安定していないシーズンを過ごし続けてきた。
2021年は、アントニオ・カルロス・ザーゴ氏が途中解任され、2022年シーズンは、レネ・ヴァイラー氏が途中解任されるという、J1優勝8回と最も優勝回数が多い名門クラブにあるまじき状況を過ごし続けていた。
だが、今シーズンは昨シーズンから途中就任したOBの岩政大樹氏の高く強い鉄壁な守備能力と、高さを生かしたセットプレーやサイドからの攻撃だけにとどまらず、時には再度警戒により空いた中央をパスで繋ぐようなバリュエーション豊富な攻撃力で好調を維持し続けている。
今シーズンは、開幕前からJリーグを騒がすニュースを届け続けてくれた。
今までボランチとしてチームを支え続けてくれた三竿健斗はポルトガルへ移籍を果たしたが、フランスのニーム・オリンピックから元日本代表の植田直通、同じく元日本代表でライバルであるガンバ大阪から昌子源、更にはJ2が誇るボールハンター・佐野海舟をFC町田ゼルビアから満を辞して獲得に成功。
更に加えて、川崎フロンターレから知念慶、サンフレッチェ広島から藤井智也というJ1でレギュラークラスの選手も獲得し、選手層の厚みを増しに増して開幕に臨んだのである。
結果的に決して満足いく結果を残しているわけではなく、26試合を終えて6位と名紋らしからぬ成績を残してはいるが、決してネガティブな要素のみがチームに浮き出ているわけではない。
例えば、鹿島のチーム全体でのソーンディフェンスの安定感である。
サイドにボールが渡ったとしても、センターバックがサイドバックのドリブル突破にケアをするのではなく、ボランチのディエゴ・ピトゥカや佐野が最終ラインにおりてケアをすることで、センターバックは相手フォワードに注意を払った守備を行うことができ、サイドからのセンタリングからの空中戦や中央へのパス・ドリブルを自由に行うことを許さないでいれる。
そして、攻撃陣の仲間隼斗や樋口雄太、更に最前線の鈴木優磨や垣田裕暉も最終ライン付近や自陣不覚のサイドラインまでプレスする意識が非常に強く、数的優位を作ることができるのも大きい。
だからと言って最終ラインが頼りないといったわけではなく、元日本代表の植田はさすがというばかりの屈強さをJリーグのピッチで表現しており、昌子が加入してもレギュラーを奪われなかった関川郁万は、182cmというセンターバックとしては決して大柄と言えない体ながら、72kgという筋骨隆々な体によって繰り出されるフィジカルはJリーグ屈指であり、対空時間の長さからの空中戦の強さや、瞬発力を活かしたインターセプトは鹿島守備陣に欠かせない戦力になっている。
更に、昨年から試合に出場し出した選手にも関わらず、正守護神として落ち着いたプレーと、チーム全体への指示や声出しによって存在感を急激に上げてきており、既にチームに欠かせない存在となっている早川友基が定着したのは大きく、安定した守備力を発揮できている重要な要素であるといえる。
そして、佐野海舟がJ1レベルでも屈指の守備力を誇っているのは驚きはしないが、いざシーズンを通してプレーを目にしていると、改めてあの回収力は素晴らしいものがある。
判断能力が桁外れに高く、姿勢を正し最後まで前を向いてボールや相手の視線を見ているからこそ、ギリギリまで見極めボールに反応することができている。
更に、体の入れ具合の巧みさを攻撃にも活かすようになり、ドリブルの際に相手の体の軸を見極めて、強靭な体格から相手を振り回しボールを取られずにドリブルでラインを上げに行ったり、パスで攻撃の繋ぎ役としても機能することもできるようになり、守備の強みを攻撃にも活かすことができるようになった佐野は来シーズンの海外移籍最有力候補と言っても過言ではないほどのプレーヤーに育っている。
第26節の湘南ベルマーレ戦でのJ1初ゴールをご覧いただければレベルの高さは一目瞭然であり、ゴールについては素敵という他ないが、ゴールまでの流れのドリブルについては過去の試合で何度も披露しており、今ではドリブルも佐野の立派なストロングポイントとして挙げるべき要素である。
そして、私は垣田の成長にも注目していきたい。
彼は、鹿島アントラーズの下部組織からトップ昇格し、ツエーゲン金沢、徳島ヴォルティス、サガン鳥栖へと他クラブで武者修行を続けており、2020年シーズンはJ2で17得点という活躍から徳島をJ1昇格に導いたり、2022年シーズンは鳥栖でレギュラーとして6得点という活躍から実績と結果を残し、J1で通じるレベルにまで成長したという証明を果たし、今シーズンから満を辞して鹿島に復帰したのである。
第9節のアルビレックス新潟戦からレギュラーに定着し、187cmの長身からヘディングだけでなく、スピードも速いことからボールをもらうまでの位置取りも非常にうまく、相手の資格にうまく入り込み、フリーを作ることに長けているため得点を量産することができる。
また、先ほど守備の意識が高いと綴ったように、ピッチ上にて幅広くプレスを仕掛けることができ、持ち味のスピードと長身を活かしたボール奪取能力はフォワードとは思えないほどの強さと守備意識の高さである。
そんな垣田を2トップの相方として支える優磨は、チームをメンタル的に助ける大黒柱であり、この男の存在は非常に大きい。
攻撃は言うまでもなく、守備においても闘志あふれるプレーで相手を追いかけディフェンスをし、攻撃の中でも中盤の底や2列目まで降りてパスをもらう動きをよく見せており、それにより、パス回しに変化を加えるだけでなく、味方がオーバーラップするスペースを作ったり、相手のフォーメーションを崩す役割にもなるため、まさにチームプレイヤーとして身を粉にしてプレーしている。
その姿は、間違いなくチームに良い影響を与えており、だからピッチ上のメンバーがチームのために個を犠牲にしたプレーができているのではと私は考えている。
名門としてあるまじき順位でありながら、決してネガティブとは言えない要素が今の鹿島には多く存在しており、今後の鹿島の動きによっては2,3年後には再び優勝カップを掲げているシーンが目に浮かんでくるのは私だけではないだろう。
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